兵庫県姫路市で行われているアーティスト・イン・レジデンス「L-AIR」で取り組んでいた、“ウェットブルー”を使った作品がひとつ、完成しました。
▶︎ まだ革ちゃうけどウェットブルーに惹かれた話@アーティスト・イン・レジデンス「L-AIR」
ウェットブルーは、皮から革へと移行する途中の状態にある、いわば生まれたての状態です。
水分を多く含んでいるので、濡れたまま手で形を整えられます。そして、乾くにつれて徐々に硬化し、最終的にはそのまま定着します。
乾いてからふたたび濡らせば、ある程度はやわらかさが戻るという性質もあり、とても可塑性の高い素材です。

今回の作品では、その可塑性を活かして、濡れた状態で立体的に成形し、完全に乾燥させるというプロセスを取りました。

乾燥が進むにつれて、革の質感は変化していきます。最初は生々しくしっとりとしていた表面が、時間とともに、パリッとした張りを持つようになり、色味も若干薄くなり……。

水分が抜けたぶん、シワに表情がついてきました。全体的に「落ち着いた」という感じ。

仕上げとして、コバ(縁)の部分だけを艶のあるブラックで縁取りしています。すると作品全体の印象が引き締まり、少しすましたような、静かな存在感が立ち上がった気がします。
乾燥後に作品を眺めていて気づいたのですが、
完全に乾いてからのほうが、シミや傷がよく見えるようになる部分がある一方で、濡れていたときには目立っていた傷が、乾燥すると曖昧にぼやけることもありました。
見えてくるものと、見えなくなるもの。
素材の水分量ひとつでかなり印象が変わるのは、やはり土に似ているな……と改めて思いました。

革が湿っているときに“生き物っぽい”とリアルに思えた部分が、時間とともに輪郭だけになり、乾燥して完成されたあとには“記憶”のように浮かび上がってくるディテールがあります。
水分量の変化が、視覚的な“記憶の編集”のようにも感じられて、素材のもつ時間性に興味がでました。
今回の制作を通じて、この方法はウェットブルーに限らず、着古した衣服や植物、古紙とかでも応用できるのではと思い至り、実際にいくつかの素材で、ひっそりとテストも始めています。
レジデンスでは、今回完成したウェットブルーにくわえて、もう一点取り組む予定です。ウェットブルーの“生まれ直し”を祝うようなイメージで、ウォールピースを作ります✌︎(‘ω’)✌︎
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