まだ革ちゃうけどウェットブルーに惹かれた話@アーティスト・イン・レジデンス「L-AIR」

現在、兵庫県姫路市で行われているアーティスト・イン・レジデンス「L-AIR」に参加しています。レザー産業が根付くこの土地で、素材と向き合いながら作品制作を進めています。

▶︎ 革を揉んだ結果、描くことに戻った話@アーティストインレジデンス「L-AIR」

制作に使う素材として、「ウェットブルー」という状態の皮革を選ぶことにしました。

ウェットブルーとは、皮が鞣され、いわゆる“革”に移行する直前の段階にある素材です。
なめしの工程を経てはいるものの、まだ染色や仕上げをしていない状態で、水分を多く含んでいます。なめし剤のクロムに染まった淡い青色をしていて、その名のとおり「ウェットなブルー」です。

皮と革のあいだにあるこの“移行体”のような状態が、自分のステートメント「自他の境界」や「変容のプロセスへの関心」にフィットしているな、と感じました。

サンプルを少しもらって、実際に手にしてみると、濡れているときはとても滑らかで柔らかく、いかにもドュルンとした「皮」の質感があります。ところが、乾いてくると一気に表情が変わり、最終的にはまるで木の皮のように固くなり、色味も少し白っぽく変化していきます。おもしろい。

ただ、数人のタンナーさんに「ウェットブルーを使いたい」と話したところ、「それ、まだ革ちゃうやん」と真顔で言われてしまいましたw
たしかに素材としては未完成で、用途としても特殊なのかもしれません。さらに、すでに加工された革と違って端材が出るというものでもないようで……。
とはいえ、なんとかご厚意で一枚、提供いただけることになりました。

ここ数日は、さっそく「抱えられる絵画作品」の制作に取りかかっています。

まるっと一枚扱ってみてまず感じたのは、とにかくめっちゃ動物の匂いがすること。でもなんか、それが生々しくてよい。

また、水に濡れた状態である程度成形ができるのですが、乾いたあとでもふたたび湿らせれば若干は形が戻るという、土のような可塑性があります。
「これは、あした扱うぞ」というウェットブルーを霧吹きで湿らせて、そそくさとビニールを被せる時の気持ちは、陶芸をしていた頃を思い出すものでした。

そして乾いてくると、そのままの形で固まり、接着剤などを使わなくてもそのまま定着するんですよね。構造的にも表現としても、とても魅力的な素材だと思います。

表面には毛穴やしわ、傷などもそのまま残っていて、素材の持っている記憶がめちゃ強く刻まれています。接着剤を使わずにここまで形が作れたのは、この素材ならではだと思いますし、この自然なドレープを最後まで活かしたいです。

このあと、自然乾燥させながら細部を少しずつ整えて、必要に応じて部分的に接着。ヤスリで質感を調整していくイメージです。

そして、もっとも楽しみにしているのが着彩の工程。
じつはすでに着彩のアイデアは浮かんでいて……、ほんとに早く試したいです。それについては、また別の機会に書ければと思います。

制作が動き出し、素材と呼吸が合ってきた感覚があります。

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