80年代の映像美に浸れる、おかわりしたくなる名作フランス映画を紹介


フランス映画『Diva(ディーバ)』をひさびさに観たんですが、美術がほんと効きすぎなんですよね。「こういう映画、もっとないのかよ…」って切望するような、80年代のフランス映画は“おかわり”したくなる魅力があります。

同じような気分の方のために、1980年代のフランス映画の中でも、とくにおすすめしたい3本をご紹介します。

『Diva』(1981年/日本公開1983年)

出典:IMDb

ジャン=ジャック・ベネックス監督の長編デビュー作。ジャンルはサスペンスとなっていますが、まったく普通のスリラーじゃないんです。主人公がオペラ歌手の歌声を盗み録りしてたら、たまたま犯罪組織に追われてる女の録音まで拾ってしまう、といううっかりな始まりは、めちゃフランス映画みがあります。ここだけ聞くと地味な話に聞こえるかもしれませんが、とにかく映像がカラフルで濃密。

リアル志向だった70年代のフランス映画とは真逆で、ポップアート的な美術、照明、そして光と影のコントラストが印象的。パリの地下鉄の線路を原付で逃げるチェイスシーンが良くて、これはコンコルド駅からオペラ駅まで実際に撮影されてるんだそう。地下鉄の無機質な空間が、幻想的に映るのが不思議です。謎の安心感がある。

出典:IMDb

撮影監督はフィリップ・ルースロ。構図や色の配置が美しくて、まるで絵画を観ているような気持ちになります。
同作は、製作当初「こんなの観る人いない」とプロデューサー陣にさんざん嫌がられてたようです。しかし結果的にはモスクワやトロントで絶賛され、パリではロングランヒット。今では国を跨いでカルト的に愛されています。

ちなみに、主演のフレデリック・アンドレイと、伝説のオペラ歌手を演じたウィルヘルメニア・フェルナンデスはどちらもほぼ映画初出演。そういうのがわからないくらいに、作品の空気と一体化しています。

音楽も良くて、とくに劇中で何度もリフレインされるカタラーニ作曲『さようなら、ふるさとの家よ』が毎度感動的。これを聴くために何度でも観たくなる映画です。

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 『Subway』(1985年/日本公開1986年)

出典:IMDb

リュック・ベッソン監督の『サブウェイ』。80年代フランスの新しいタイプの青春映画の様式“シネマ・デュ・ルック”の代表作です。地下鉄に逃げ込んだ青年が、そのままパリの地下世界でバンド組んだり恋したりする、というやや突飛な話。でも、なんか全部アリに思えてくるのが同作の魅力な気がします。

主演のクリストファー・ランバートがタキシード姿でネオン管を持って現れるシーンとか、映像が異常にかっこいい。気取りと茶目っ気の絶妙なバランスが見事なんです。

実際に地下鉄やRERの構内で撮影された映像と、アレクサンドル・トラウナーが手がけたセットを融合して、架空の地下迷宮ができあがっています。この美術がセザール賞を受賞したのも納得。エリック・セラのバンドが演奏する『イッツ・オンリー・ミステリー』は当時のフランスでヒットもしました。

出典:IMDb

キャストは当初はスティングが主演する予定だったのが、色々あってキャンセルされて、主演女優・アジャーニの推薦で、まだ無名だったクリストファー・ランバートが抜擢。結果的に彼がセザール主演男優賞を獲ることになるんだから、人生って分からないですね。いい感じの船が来たらすぐに飛び乗れるように、準備しとかないとって思います。

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 『Asphalte』(1981年/日本未公開)

出典:IMDb

この映画、日本で劇場公開されてないんです。ただ、なぜか子供の頃にどこかで観たような記憶があって、「車がクラッシュしてなんか怖い映画だったな」っていう、断片的な記憶があって、大人になってからその正体が『Asphalte』とわかりました。

舞台は、夏のバカンスに突入するフランスの高速道路。大量の車が行き交う中で突然大規模な事故が発生し、それに巻き込まれた人たちの姿を淡々と追っていく……みたいな群像劇です。セリフ全く記憶にないので、たぶんフランス語だったんだと思う。

リアルなカーアクションも見どころですが、映像のトーンが独特で、だから記憶に残っていたんだろうなあと思います。白昼夢みたいな柔らかい光と静けさ、不協和音ぽい音楽が相まって、現実と非現実の境界があいまいになっていくような感覚になります。これ90年代にどこかで放送していたのか…、知っている方いますか?

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観たのが子供時代だったからかもなんだけど、登場人物たちの表情もやけに印象的で、何かを失った直後の人間の空っぽな感じは、ややトラウマ気味。事故のあとに残された風景と人々の揺れが続いていく感じで、「便利さとか幸福を求めて突き進んだ先に何があるんだろう?」って、なっちゃいけない気持ちになる映画です(全然違う話だったらどうしよう)。


『Diva』『Subway』『Asphalte』という3本の80年代フランス映画を紹介しました。
どれも時代の空気を切り取っていて、観るほど味のある作品です。ぜひ一度この世界観を体験してみてください。
※『Asphalte』については情報求みます

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