『CURED/キュアード』元ゾンビが直面する差別と社会問題の真実とは

映画『CURED/キュアード』あらすじ解説|”元ゾンビ”が差別と排除に直面する社会派ホラー

ジョージ・A・ロメロ監督が1968年に手がけた『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』がゾンビ映画の原点として知られ、以降、ゾンビはホラーの定番テーマとしてさまざまな作品に登場してきました。『CURED/キュアード』はその流れを一新する挑戦的な作品です。

この映画は「もしゾンビが治癒し、社会復帰したら」という発想を基に、元ゾンビたちの“社会との再接触”に焦点を当て、私たちが直面する差別や偏見の問題を浮き彫りにします。

本作は、新型コロナウイルスで不安が高まる時期に公開され、単なるホラーを超えた鋭い社会的テーマで注目を集めました。



映画『CURED/キュアード』の概要

出典元:IMDb

『CURED/キュアード』の舞台は、ゾンビ化の原因となったパンデミックが収束し、治療が確立された後の世界。監督を務めたのはアイルランド出身のデイヴィッド・フレインで、元ゾンビとして治療された人々が社会に戻り、偏見や差別に苦しむ姿を描きます。これまでのゾンビ映画ならば、ゾンビ化すれば元には戻れませんが、本作の登場人物は再び人間としての生活を取り戻そうとします。しかし社会は彼らをそう簡単には受け入れてくれないのです。

ゾンビ映画における新たな視点「元ゾンビ(回復者)」

出典元:IMDb

『CURED/キュアード』で描かれる元ゾンビ、いわゆる「回復者」たちは、ゾンビ化による人間の襲撃と感染の記憶をすべて持っています。治療されているものの、ゾンビだった頃の記憶や罪の意識が重くのしかかり、PTSDに苦しむ日々が続きます。もはや彼らは単なる加害者ではなく、感染の被害者としても描かれ、複雑な立場に立たされています。

映画『CURED/キュアード』の作品情報

  • 公開:2020年3月20日(日本)
  • 監督:デイヴィッド・フレイン
  • 脚本:デイヴィッド・フレイン
  • 上映時間:95分
  • 制作:アイルランド・フランス
  • 配給:キノフィルムズ

主人公を演じるのはエレン・ペイジ。彼女は、2006年の『JUNO』での好演で注目を浴び、『インセプション』や『アンブレラ・アカデミー』といったヒット作に出演してきました。本作ではプロデューサーも兼任し、夫をゾンビに殺されて以来、義弟である回復者と息子と暮らすシングルマザーという難しい役を演じています。

映画『CURED/キュアード』のあらすじ

出典元:IMDb

舞台はパンデミックが終息したアイルランド。メイズ・ウイルスの治療が進み、元感染者は「回復者」として社会復帰を果たそうとしています。青年セナンもその一人で、義姉のもとに身を寄せつつ、ゾンビだった記憶に苦しみながら静かに生活しています。しかし街では回復者を拒絶するデモが頻発し、元ゾンビたちは社会から冷たい目を向けられています。孤立感が増す中、絶望した回復者たちは、差別に対する復讐としてテロに走ろうとするのです。

元ゾンビと人々が共存する難しさ

『CURED/キュアード』は、ゾンビ映画の新たな切り口として、パンデミックの終焉後に待つ差別や恐怖をテーマにしています。元ゾンビたちは再び人間として生きようとするものの、社会からの拒絶に苦しみます。パンデミック後の世界を描いた作品には、『アイ・アム・レジェンド』や『28日後…』のような作品もありますが、いずれもサバイバルがメインのテーマです。本作では、そこに留まらず、治療された元ゾンビが社会復帰する現実と、それに伴う偏見や憎悪に向き合います。

社会問題に鋭く切り込む『CURED/キュアード』

出典元:IMDb

この映画には、現代社会が抱える差別や偏見、移民問題など、さまざまなテーマが反映されています。新型コロナウイルスの影響でアジア人への差別が話題になったように、過度な防衛意識や集団の結束が差別や排除へとつながる構図が鮮明に描かれます。自らの立場を差別される側に置き換えたとき、苦しみや重圧がどれほど深いものかを知る機会となる本作は、差別と共存の難しさを私たちに問いかけてきます。

映画『CURED/キュアード』が突きつける問い

出典元:IMDb

『CURED/キュアード』は、差別をされる側の視点から私たちに「自分が差別する側だったら」と考えさせます。恐怖が憎しみに変わり、社会全体に広がっていく様子を描く本作は、「防衛」と「排除」の境界線がどこにあるのかを深く問いかける作品となっています。

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