世界中で愛されるアニメーション映画を数多く生み出してきた日本が誇るスタジオ「スタジオジブリ」。本記事では、『風の谷のナウシカ』から『君たちはどう生きるか』まで、ジブリの全作品を映画マニア視点で解説し、それぞれの魅力を余すところなくお届け。また、ジブリファン必見の制作秘話や裏話、監督たちが作品に込めた想いにも迫ります。
Contents
- 1 1. 『風の谷のナウシカ』(1984年)宮崎駿
- 2 2. 『天空の城ラピュタ』(1986年)宮崎駿
- 3 3. 『となりのトトロ』(1988年)宮崎駿
- 4 4. 『火垂るの墓』(1988年)高畑勲
- 5 5. 『魔女の宅急便』(1989年)宮崎駿
- 6 6. 『おもひでぽろぽろ』(1991年)高畑勲
- 7 7. 『紅の豚』(1992年)宮崎駿
- 8 8. 『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年)高畑勲
- 9 9. 『耳をすませば』(1995年)近藤喜文
- 10 10. 『もののけ姫』(1997年)宮崎駿
- 11 11. 『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999年)高畑勲
- 12 12. 『千と千尋の神隠し』(2001年)宮崎駿
- 13 13. 『猫の恩返し』(2002年)森田宏幸
- 14 14. 『ハウルの動く城』(2004年)宮崎駿
- 15 15. 『ゲド戦記』(2006年)宮崎吾朗
- 16 16. 『崖の上のポニョ』(2008年)宮崎駿
- 17 17. 『借りぐらしのアリエッティ』(2010年)米林宏昌
- 18 18. 『コクリコ坂から』(2011年)宮崎吾朗
- 19 19. 『風立ちぬ』(2013年)宮崎駿
- 20 20. 『かぐや姫の物語』(2013年)高畑勲
- 21 21. 『思い出のマーニー』(2014年)米林宏昌
- 22 22. 『レッドタートル ある島の物語』(2016年)マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
- 23 23. 『劇場版 アーヤと魔女』(2021年)宮崎吾朗
- 24 24. 『君たちはどう生きるか』(2023年)宮﨑駿
1. 『風の谷のナウシカ』(1984年)宮崎駿

スタジオジブリの原点ともいえる作品『風の谷のナウシカ』。宮崎駿監督の壮大な世界観と、生命や自然との共生をテーマにした物語は、アニメーションの域を超えた深いメッセージ性を持っています。

腐海と呼ばれる汚染された大地が実は浄化を進める自然のメカニズムであるという逆説的な設定は、当時としては環境問題を先取りした鋭い洞察。ファンにとって、この映画は「見るべき」だけでなく、何度も考えさせられる作品として評価されています。
またナウシカの慈愛に満ちたリーダーシップや、風の谷の人々との絆は、理想的なヒロイン像としてのちのアニメ作品に影響を与えました。

『風の谷のナウシカ』は、ジブリ設立前に制作された作品。宮崎駿が自身の漫画作品を原作とし、映画化に至る過程では、制作会社トップクラフトが倒産の危機に瀕しており、資金難から制作が困難でした。しかし、徳間書店の徳間康快氏のサポートにより、制作が実現。この成功をきっかけに、スタジオジブリが設立されました。作品のメッセージは、環境破壊や自然との共生というテーマが強く打ち出されており、これは後のジブリ作品にも引き継がれます。
2. 『天空の城ラピュタ』(1986年)宮崎駿

『天空の城ラピュタ』は、冒険アニメの金字塔として名高い作品。スティームパンクの要素を取り入れた美しい空中世界や、手に汗握るアクションシーンは、視覚的にもストーリー的にも圧倒的な魅力を持っています。

シータとパズーの友情や、ラピュタという失われた文明への憧れが物語の核になっており、観る者に「失われたもの」を追い求める人間のロマンを感じさせます。また、ドーラ一家のキャラクターたちが物語にコミカルな要素を加え、シリアスな展開の中にも笑いを忘れないジブリらしいバランスが見事です。

また、名シーンと言えるラピュタの崩壊シーンでは、破壊と創造が同時に描かれ、文明と自然の共存というテーマが浮き彫りになります。宮崎監督の冒険心と詩的な世界観が詰まった作品。
3. 『となりのトトロ』(1988年)宮崎駿

そのシンプルさと温かさが魅力の『となりのトトロ』は、ジブリ作品の中でも特に愛されている作品と言えるのではないでしょうか。舞台となる田舎の風景、昭和の日本家屋、そして子どもたちの日常生活の中に潜むファンタジー要素は、懐かしさと新鮮さを同時に感じさせます。

トトロというキャラクターは、まさに日本のアニメーション界を代表する存在。その神秘的な力は子どもの頃はもちろん、大人になってから響く、という人も多いのでは。トトロとサツキ、メイの交流は、現実と夢の境界が曖昧になった瞬間を描いており、まるで観る者に童心を取り戻させる魔法のようなのです。

また、病気の母を心配する姉妹の感情が、急に物語に現実味を与えます。子どもの頃の不安感をいっぱいに演出しながらも、その中で希望を見つけていく姿には思わず共感し、心を打たれます。
癒しと感動を提供し続ける、日本人の「家宝」のような名作。
4. 『火垂るの墓』(1988年)高畑勲

『火垂るの墓』は、ジブリ作品の中でも最も感情的に重い作品でしょう。戦争の悲惨さと無情さを描く一方で、兄妹の絆や純粋さが物語の軸となっています。この作品は決してエンターテインメントとして楽しむものではなく、戦争の現実を直視させるための作品です。
セイタとセツコの生き様は胸を締め付けるほどの悲しみを与え、彼らの間に流れる愛情が一層その感情を強くします。特にセツコが火垂るの儚い美しさに惹かれる場面は、命の儚さと戦争によって奪われる無垢さを象徴しており、何度観ても涙を誘う名シーン。
この映画を語るとき、決して避けて通れないのは「戦争と平和」への深い思索。ジブリ作品が単なるアニメーションを超えた社会的メッセージを伝える手段であることを証明しています。
5. 『魔女の宅急便』(1989年)宮崎駿

『魔女の宅急便』は、成長と自立をテーマにした、宮崎駿監督の代表作の一つ。キキという魔女の少女が、自分の力を試しながら新しい街での生活に挑む姿は、まさに誰もが経験する「大人への一歩」を象徴しています。

キキが魔法を失い、再び自分を取り戻すまでの過程は、単なるファンタジーに留まらず、自己喪失や自信の回復といった現実的なテーマを巧みに描いています。舞台となる街の美しさや、キキの新しい友達との交流が作品に温かみを与え、ジブリ特有の「異国感」と「日常感」が確立した映画と言えるでしょう。

また、黒猫のジジとの絆も物語を彩る重要な要素。彼の存在はキキの成長を象徴的に描いています。
本作は宮崎駿が角野栄子の児童文学を原作に映画化した作品で、スタジオジブリにとって初の都市部が舞台となるファンタジーでした。制作当時、宮崎駿はキキの独立と成長をテーマに据えながらも、物語のトーンに迷い、何度も脚本を練り直しました。また、配給元の東映が興行収入に期待を抱いていた一方で、宮崎駿は「ファンタジー映画がどこまで受け入れられるか」について不安を抱えていたとも言われています。しかし、結果的に大ヒットを記録し、ジブリの黄金時代が加速するきっかけとなりました。
6. 『おもひでぽろぽろ』(1991年)高畑勲

『おもひでぽろぽろ』は、主人公が自分自身の過去を振り返るストーリーであり、ジブリ映画の中でも非常に個人的な感情に訴える作品です。主人公・タエ子が、田舎への旅を通して少女時代の記憶を辿り、自分自身と向き合う姿は、多くの観客に共感を与えます。

特に、田舎での生活や自然との触れ合いは、現代社会の忙しさに追われる都市生活者にとって、どこか心地よい逃避感じさせるかも。高畑勲監督のリアリズムが光る描写は、ノスタルジーをテーマにしながらも、ただ過去を美化するのではなく、成長や変化の重要性をしっかりと伝えます。

農作業や人々との関わりがタエ子の内面的な成長を支える様子は感動的で、最後の場面で彼女が未来へと一歩踏み出すシーンは、力強いメッセージを残します。この映画は静かで深い感動を与える「大人のための作品」としてファンにとって、特別な位置を占めています。
7. 『紅の豚』(1992年)宮崎駿

『紅の豚』は、大人のロマンを詰め込んだ宮崎駿監督の異色作。ポルコ・ロッソという豚の姿に変えられた元エースパイロットの物語は、戦争の影を感じさせながらも、自由と誇りを求める男の冒険心が力強く描かれています。

作品全体を通して漂うノスタルジックな雰囲気や、美しいイタリアのアドリア海の風景は、宮崎駿監督がこだわる「飛行」への情熱が随所に反映されています。またポルコの皮肉屋でありながら心優しい性格や、彼を取り巻く個性的なキャラクターたち(特にフィオやジーナ)は、作品に魅力的な人間味を加えています。

戦争の影に隠された人間の矛盾や哀しみもさりげなく描かれており、単なる冒険活劇に終わらない深みがこの映画の醍醐味。、『紅の豚』は宮崎駿が描く「人間の誇り」の物語として、特別な輝きを放っています。
8. 『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年)高畑勲

『平成狸合戦ぽんぽこ』は、環境問題と人間社会の拡大による自然破壊をテーマにした、ユーモアとシリアスさが絶妙に混じった作品。高畑勲監督らしい社会的なメッセージが強調されており、タヌキたちが人間に抵抗しながらも結局は敗北を迎える姿はなんとも切なく、コミカルでありながらも痛烈な風刺を感じさせます。

作中でタヌキたちの「変化術」は楽しく描かれ、彼らが団結して人間に挑む様子には笑いがありますが、物語が進むにつれ、その背後にある絶望感が徐々に浮かび上がってきます。

特にタヌキたちがかつての豊かな自然を思い出し、再び見ることのできない過去を懐かしむシーンは、現代社会の無情さを感じずにはいられません。子どもも楽しめるエンターテインメントという位置付けでありながら、環境問題や自然との共生について深く考えさせられる映画として評価されています。
9. 『耳をすませば』(1995年)近藤喜文

『耳をすませば』は、青春時代の不安や夢を、初恋を通して描いた美しいラブストーリー。主人公の雫が、自分の進路や恋心に悩みながら成長していく姿は、多くの“元”ティーンエイジャーの共感を呼び起こします。

彼女が物語を書くことを通して自己発見をしようとする過程は、自分の才能や将来に対する不安を抱く全ての人に響くもの。また、物語の舞台となる東京の郊外の風景や、地元の小さな図書館、雑貨屋「地球屋」などの細部にわたる描写は、ジブリらしいリアリティと温かさに満ちています。

途中セイジとの出会いが雫の成長のきっかけとなり、彼のヴァイオリン作りへの情熱と雫の創作活動がリンクすることで、物語はさらに深みを増しています。青春の甘酸っぱさと自己実現をテーマにした一作であり、特に10代のファンには強く心に残る作品です。
10. 『もののけ姫』(1997年)宮崎駿

『もののけ姫』は、宮崎駿監督の壮大な自然賛美と人間社会への鋭い批判が込められた作品。エボシ御前率いるタタラ場の人間たちと、森を守ろうとする動物神たちの対立を軸に、自然と人間の共存が描かれます。

アシタカとサンという二人の主人公は、異なる立場から争いに関わりつつも、最終的には互いに理解し合おうとします。この映画では、従来の「善悪二元論」を否定し、自然破壊の原因や人間のエゴを複雑に描いており、鑑賞者に長きにわたって考察を促しているのです。

観る者に自然の力強さと畏敬を感じさせるのは、壮大なスケールの背景と、生命の神秘を感じさせる「シシ神」や「コダマ」たちの描写。『もののけ姫』は、宮崎駿監督が環境問題や人間の存在についての問いを強く投げかけた代表作であり、観るたびに新たな発見がある深い作品です。
11. 『ホーホケキョ となりの山田くん』(1999年)高畑勲

『ホーホケキョ となりの山田くん』は、ジブリ作品の中でも異彩を放つ実験的な作品。漫画的でシンプルなビジュアルスタイルと、日常生活の断片的なエピソードが組み合わさっており、高畑勲監督らしいユーモアと哲学が散りばめられています。

山田家のユルい日常を描く一方で、家族の絆や日本の伝統的な価値観をほのぼのとした視点で捉えています。この映画は、派手なアクションやファンタジー要素がない代わりに、日常の些細な出来事や人間関係の妙を楽しむことができます。

作品全体が詩的で、ユーモラスな表現が使われているものの、その裏には高畑監督独自の鋭い社会観察が感じられるのが魅力。この映画は万人受けするタイプではないものの、アニメーションの新たな可能性を探求する意欲作として興味深い位置づけとなっています。
12. 『千と千尋の神隠し』(2001年)宮崎駿

『千と千尋の神隠し』は、宮崎駿監督の最高傑作と称され、アカデミー賞を受賞したことで世界的にも認知度が高い作品。異世界に迷い込んだ少女・千尋が自分の名前を奪われ、成長していく過程を描いています。

“神々の集まる湯屋”という独特な設定や、ユニークなキャラクターたち(カオナシ、湯婆婆、坊など)は、視覚的にも非常に印象深く、宮崎監督の豊かな想像力が爆発しています。さらに千尋が仕事を通じて自立し、両親を救うために奮闘する姿は、自己発見と成長の物語として深いメッセージ性を放ちます。

「名前を失うこと」がアイデンティティを奪われることを象徴しており、現代社会における自己喪失のテーマが強く反映されています。
宮崎駿はこの作品を制作するにあたり、友人の娘に向けた映画を作りたいと考えていたのだそう。また、通常の映画制作期間の約1.5倍の時間をかけ、細部にまでこだわり抜かれた作品として知られています。
13. 『猫の恩返し』(2002年)森田宏幸

『猫の恩返し』は、ジブリ作品の中でも軽やかでファンタジー色が強い作品。『耳をすませば』のスピンオフ的な展開として、猫男爵バロンが再登場し、猫の国という独特な世界観が広がります。

主人公のハルが、猫の王国に迷い込み、バロンやムタたちと共に自分の運命を切り開く物語は、シンプルでありながら冒険心に満ちたもの。ジブリの中でもテンポが良く、気軽に楽しめる作品として人気があります。特にハルが「自分らしさ」を取り戻す過程は、観る者にとって共感しやすいテーマです。

また、猫たちのユーモアや独特のキャラクターが作品全体に楽しさを加え、エンターテインメント性が強い一作となっています。深刻なテーマを扱う作品が多いジブリの中で、心軽やかに楽しめる癒し系の作品として位置づけられています。
14. 『ハウルの動く城』(2004年)宮崎駿

『ハウルの動く城』は、宮崎駿監督が再び「戦争」と「人間の成長」をテーマに描いた壮大なファンタジー作品。原作はダイアナ・ウィン・ジョーンズの小説ですが、宮崎監督の解釈が加わり、戦争の影や人間の内面の葛藤がより強調されています。

主人公のソフィーが、呪いで老女となり、ハウルの城で様々な出会いを経て自己発見していく過程は、内面的な成長と自己受容を描いています。また、ハウルという魔法使いが抱える孤独や恐れが、ソフィーとの関わりを通じて変化していく様子も見逃せません。

作品全体を包む独特の美しい背景描写や、動く城の奇抜なデザインは、ファンにとって大きな魅力。戦争の悲劇を背景にしつつ、希望と愛を描いたファンタジーとして、ジブリファンの心に深く刻まれる作品です。
15. 『ゲド戦記』(2006年)宮崎吾朗

『ゲド戦記』は、宮崎吾朗の監督デビュー作であり、父・宮崎駿の影響を強く感じさせる作品です。原作はアーシュラ・K・ル=グウィンの『ゲド戦記』シリーズで、壮大なファンタジーの世界観をジブリの映像美で表現していますが、物語の展開やキャラクターの感情描写においては賛否両論があります。

主人公のアレンが自分自身の恐怖や闇と向き合い、成長していく姿は、若者の内面的な葛藤を丁寧に描いている一方で、作品全体のリズムや物語の進行がやや不均衡に感じられる部分もあり、原作ファンからの批判も少なくありません。それでも、映像の美しさや世界観の壮大さは、ジブリらしい魅力を十分に感じさせます。

ジブリファンにとって、『ゲド戦記』は監督としての宮崎吾朗の第一歩であり、今後の成長に期待を抱かせる作品でもあります。
『ゲド戦記』は、宮崎駿が長年映画化を希望しつつも実現できなかったプロジェクトでした。宮崎吾朗は建築学者としての経験を持ち、映画制作にはほとんど携わったことがありませんでしたが、父である宮崎駿の強い後押しにより監督に抜擢。制作途中、宮崎駿との意見の衝突が頻繁にあったことが知られており、父子関係の葛藤が制作過程に影響を与えたとされています。
興行的には成功を収めましたが、批評面では賛否両論となり、宮崎吾朗自身もそのプレッシャーについて公言しています。
16. 『崖の上のポニョ』(2008年)宮崎駿

『崖の上のポニョ』は、宮崎駿監督が子どもたちのために作り上げた純粋なファンタジー。ポニョという魚の少女が人間になりたいと願い、冒険を繰り広げる物語は、まるで絵本のような優しさと、宮崎監督の海に対する愛情が溢れています。

手描きにこだわったアニメーションは、波や海の表現が特に印象的で、動きの豊かさや色彩の鮮やかさが観る者を引き込みます。宗介とポニョの無邪気な友情や、自然との触れ合いが描かれ、作品全体に温かさが漂います。

また、自然災害や人間の営みといったテーマが背景にありながらも、子ども向け作品としての明るさや軽やかさが保たれており、大人も楽しめる作品です。宮崎駿監督が創り出した愛らしいキャラクターの物語の中には、自然への畏敬が詰まっています。
17. 『借りぐらしのアリエッティ』(2010年)米林宏昌

『借りぐらしのアリエッティ』は、小さな世界の視点から描かれる冒険と家族愛がテーマの作品。小人族の少女アリエッティと、彼女が「借りぐらし」をしている家の病弱な少年・翔との出会いが、異なる世界の住人同士の触れ合いを通じた成長の物語を紡ぎます。

ジブリらしい緻密な描写が光り、小人の視点で描かれる庭や家の中の風景は、驚きと発見の連続。その細部にまで込められた想像力にファンは引き込まれます。米林監督のデビュー作としても高く評価され、宮崎駿や高畑勲とは異なる新たなジブリの才能を感じさせます。

作品全体に漂う優しいトーンと、アリエッティの強さや孤独に立ち向かう姿が印象的であり、繊細で愛らしいファンタジーの一つとして特別な位置を占めています。
18. 『コクリコ坂から』(2011年)宮崎吾朗

『コクリコ坂から』は、宮崎吾朗監督による青春ドラマで、1960年代の横浜を舞台にしたノスタルジックな作品。戦後の混乱が落ち着き、次の時代へと進もうとする日本の青春世代を描いた本作は、アクションやファンタジー要素を排したストーリーが特徴です。

主人公の海と俊の間に芽生える淡い恋愛模様は、純粋でありながらも、家族の過去や時代の変化といった複雑な背景が絡み合います。とくに海が毎朝掲げる旗や、旧校舎「カルチェラタン」の保存活動を通じて描かれる若者たちの情熱と団結力は、作品に力強さを与えています。

静かで落ち着いたトーンの中に、日本の伝統や家族の絆、未来への希望が色濃く描かれており、宮崎吾朗監督の感性が光る一作。ファンタジーとは一線を画すものの、ジブリの表現の幅の広さ、多様な魅力を再確認させられる作品です。
19. 『風立ちぬ』(2013年)宮崎駿

『風立ちぬ』は、宮崎駿監督が現実世界を舞台に描いた作品で、零戦設計者・堀越二郎をモデルにした半自伝的なストーリー。夢と現実、戦争と愛が交錯するこの作品は、ジブリ作品の中でも特に大人向けの深いテーマを扱っています。

飛行機への情熱を追求する二郎と、彼の愛する菜穂子との関係が繊細に描かれ、彼の人生の中で訪れる喜びと悲劇が観客の心を打ちます。戦争という悲劇的な背景がある一方で、二郎の「美しい飛行機を作りたい」という純粋な夢が強調されており、宮崎監督自身のクリエイターとしての葛藤や信念が色濃く反映されています。

作品全体を通して、夢を追い続けることの喜びと苦しみ、そしてその背後にある犠牲が丁寧に描かれており、当時宮崎駿監督の引退作とされたことも含め、特別な感慨を抱かせる一作です。
制作中、東日本大震災の影響で日本社会全体に不安が広がる中、宮崎駿は「それでも夢を追い続けることの意義」をテーマに映画を作り続けました。戦争責任や平和への願いに対する宮崎駿のメッセージが込められ、同監督のフィルモグラフィーの中でも最も個人的な作品であると言われています。
20. 『かぐや姫の物語』(2013年)高畑勲

『かぐや姫の物語』は、絵巻物のような美しいタッチで描かれた、ジブリ史上最も詩的な作品の一つです。日本の古典「竹取物語」を原作にしながらも、高畑勲監督独自の解釈と社会的メッセージが加えられています。

かぐや姫の心の中にある自由への渇望と、人間としての喜びや悲しみが、繊細かつ大胆に描かれており、そのビジュアルの美しさは圧巻です。特に、かぐや姫が月に帰る直前の疾走するシーンは、彼女の感情の爆発が強烈に伝わり、観客を圧倒します。

同作の制作には8年以上を要し、スタジオジブリの資金を大幅に消耗することになりました。高畑監督は、従来のアニメーションとは異なるスタイルである「手描き風」のアニメーションに挑戦し、平安時代の絵巻物のようなビジュアルを実現。プロジェクトが進む中で、何度もストーリーの練り直しが行われ、完成が遅れた結果、予算が増大したため、スタジオ内での意見対立も発生しました。
作品全体に流れる自然や四季の描写もまた、ジブリならではの美意識を隅々に感じさせます。従来のアニメーションとは一線を画す“アート作品”として、心に深く残る作品であり、高畑監督の遺作としてその芸術性とメッセージ性が高く評価されています。
21. 『思い出のマーニー』(2014年)米林宏昌

『思い出のマーニー』は、米林宏昌監督が再び手掛けた作品で、心の孤独をテーマにしたファンタジーです。主人公のアンナが、ひっそりとした村で出会った不思議な少女マーニーとの交流を通じて、自分の過去や心の傷と向き合っていく物語には、静かな美しさと繊細な感情が溢れています。

作品全体に漂う幻想的な雰囲気や、湿地帯にある古びた洋館の美しい描写が、マーニーの正体やアンナの内面世界と絡み合い、視聴者に深い余韻を残します。

親との関係や孤独感に悩むアンナが、最終的に自分を受け入れていく過程は、心に響く成長物語となっており、特に若い視聴者や孤独を感じた経験のある人々に強く訴えかけます。米林監督の繊細な感性と美しい映像表現が光る一作であり、心の癒しを求める人々に寄り添う作品です。
22. 『レッドタートル ある島の物語』(2016年)マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット

『レッドタートル ある島の物語』は、スタジオジブリが海外の監督と共同制作した初の作品。台詞をほとんど使わずに自然との共存を描いた静謐な映画です。

無人島で一人の男が遭難し、赤いカメとの不思議な出会いを通じて生と死、愛と再生を経験するという物語は、極めてシンプル。絵本のように洗練されたビジュアルと、穏やかなリズムで進む物語は、ジブリ作品に共通する「自然との共生」や「命の循環」というテーマを体現しており、観る者に瞑想的な体験を提供します。

ジブリの従来の作風とは異なるアプローチながらも、その精神はしっかりと受け継がれており、言葉に頼らない映像の力が強く感じられる作品です。アート的な作品として新たな視点をもたらし、スタジオの可能性を広げる一作となっています。
23. 『劇場版 アーヤと魔女』(2021年)宮崎吾朗

『劇場版 アーヤと魔女』は、スタジオジブリ初のフルCGアニメーション作品であり、宮崎吾朗が再び監督を務めた作品です。ダイアナ・ウィン・ジョーンズの小説を原作にしており、魔女に育てられた少女アーヤが、知恵と勇気で周囲の人々を巻き込みながら成長していく姿を描いています。

CGによるビジュアルは、従来のジブリ作品とは一線を画し、ファンの間で賛否両論が巻き起こりましたが、アーヤの生き生きとしたキャラクターや、魔法に満ちた世界観はジブリらしい要素を感じさせます。

従来の手描きアニメーションに対する愛情が強いファンには物足りなさを感じる部分もありますが、新しい技術に挑戦し、異なる表現方法で物語を紡ぐジブリの姿勢は評価されるべきです。『アーヤと魔女』は、宮崎吾朗監督が新たなアプローチで見せたジブリ作品として、今後の進化を感じさせる試金石と言えるでしょう。
24. 『君たちはどう生きるか』(2023年)宮﨑駿

『君たちはどう生きるか』は、宮崎駿監督が長い沈黙を破り、再び手掛けた話題作です。この作品は吉野源三郎の同名の児童文学を基にしつつ、宮崎監督の独自の解釈が加えられたもので、人生や存在についての深い問いを投げかけます。

現代社会の中で「生きる意味」や「人間としてのあり方」を問い直すテーマは、宮崎監督自身の人生経験や、彼が持つ社会へのメッセージが色濃く反映されています。ビジュアル的には、宮崎監督のこれまでの作品同様、美しい背景と細やかな描写が作品に力を与え、観る者を圧倒します。

タイトル通り、観客に「君たちはどう生きるのか?」という問いを投げかけながらも、決して答えを押し付けず、自由な解釈を促す構成が、深い余韻を残します。
『君たちはどう生きるか』は、宮崎駿監督の集大成であり、これが遺作となるならば特に、彼のフィルモグラフィーの中でも重要な位置を占める作品となるでしょう。
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