『なぜ君は総理大臣になれないのか』一人の政治家の17年を描くドキュメンタリー

ドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』は、17年間にわたり衆議院議員・小川淳也氏を追った作品です。2019年、国会で統計不正問題を追及し「統計王子」として話題になった彼の姿を見て、政治に無関心だった私でさえ「こんな政治家がいるんだ……」と驚きました。ここでは、小川氏の人物像と本作のあらすじをネタバレを交えてご紹介します。

出典元:IMDb

予告では、有権者から「イケメンみたいな顔しやがって」と辛辣な言葉を浴びせられる小川議員の姿が。タイトルの「なぜ君は総理大臣になれないのか」は、一見皮肉に聞こえますが、実は監督の小川氏への敬意が込められたものなのです。

政治家を17年追い続けたドキュメンタリー

監督を務めたのは、大島新氏。元フジテレビのディレクターで、『園子温という生きもの』『ぼけますから、よろしくお願いします。』など、数多くのドキュメンタリーを手掛けています。32歳で出会った小川氏の姿を17年にわたって追い続け、どちらかの政党に偏ることなく、政治の本質に迫った本作は、現代政治に鋭く切り込むドキュメントです。

「総理大臣になれない」政治家・小川淳也とは?

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小川氏は1971年生まれ、香川県出身。東京大学卒業後、総務省に入省。2005年に衆議院議員に初当選し、2009年の政権交代時には「日本の政治を変える」と意欲を見せ、次世代のリーダーとして注目されましたが、現状では総理大臣への道は決して平坦ではありません。本作のレビューには「この作品で初めて小川氏を知った」という声も多く、なぜこうした政治家が広く認知されていないのかと疑問に思わされます。

映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』あらすじ(ネタバレ)

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ここからは映画の内容をネタバレを交えて紹介しますが、ドキュメンタリー作品なので実際の出来事に基づいた展開です。劇場でも十分楽しめる内容となっているので、ぜひお読みください。

大島監督が感じた初対面の小川氏

大島監督と小川氏の出会いは、2003年10月の衆議院解散の日でした。32歳で初出馬を控えた小川氏が「国民のためなら負けるつもりはない」と語る姿に心惹かれ、以降、監督は事あるごとに小川氏を撮影。彼の言葉には、他党や自党といった派閥ではなく、本当に国民に向けられた真摯さが感じられました。

「どうしたら政治家として成り上がれるのか?」

小川氏には地盤も看板もなく、党内で発言力を得るためには地元での直接当選が必要。しかし、香川での選挙は有力な他議員に阻まれ、比例当選を繰り返す日々。党内での地位を得るべきか、それとも誠実さを貫くべきか、小川氏は葛藤し続けます。映画では、彼の父親が「大学教授の方が向いているかも」と語る場面もあり、まさに政治家としては「向いていない」と思わせる人柄なのです。

「この人は政治家に向いていないのかもしれない」と思った監督の本音

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2011年の震災後の政権交代を経て、安定した自民党政権が続く中で、野党は内部でのまとまりを欠き、相手の揚げ足取りばかり。そうした中でも奮闘する小川氏を追う大島監督も「この人は本当に政治家に向いていないかもしれない」と感じる場面が増えたと言います。小川氏の誠実さは、政治の世界ではかえって仇になるのです。

2017年総選挙の苦悩と決断

2017年、民進党の分裂が決定的となり、小川氏は「希望の党」への合流か無所属での出馬かの選択を迫られます。信念と支持者との間で悩み抜いた小川氏は、希望の党での出馬を決断。しかし「本当に正しかったのか」と、自らの判断に自信を持てない姿が印象的です。

本作から見えてくるもの

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小川氏が「政治は人々の代弁者であるべき」という信念を貫く姿は、「誰が政治を語るべきか」を私たちに問いかけます。作品を通して小川氏の真摯な姿に触れると、政治家を知ることの大切さを実感させられるのです。

2020年5月のコロナ禍における小川氏の発言も収録され、現実に向き合うその姿勢が伝わってきます。『なぜ君は総理大臣になれないのか』は、現代の政治システムで本音を語れる政治家がいかに少ないかを痛感させる、単なる政治ドキュメンタリーを超えた作品です。

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